新着映画レビュー

 11月いっぱいでユナイテッドピープルとの契約が終了するFKシネマは、このほぼ一年の間に同社が現時点で取り扱っている作品のすべてを上映しました。その中でもっとも刺激的な作品のひとつが、『ポバディー・インク ~あなたの寄付の不都合な真実~』です。再生チェックを兼ねて視聴したばかりです。少ない言葉で感想を述べるのは簡単ではありません。できることならいっしょに鑑賞した人と人が向き合って懇談し、深めたい作品です。

 今ではすっかり相対的貧困家庭に含まれる身には、貧困という言葉が持つ響きにある種の抵抗を感じます。貧しいから困るのではなく、困るのは、生きていくのが困難な社会の仕組みにあると感じているからです。映画の冒頭に「世界が変化しないのは、変化で損をするのは強者、つまり極一部の富者や権力者で、得するのが大多数の弱者だから」という内容のメッセージが流れ、寄付をはじめとした支援が今やpoverty inc.”貧困産業“として貧困を維持させている構図があることを指摘しています。

 「貧しいから能力がない、力がないから貧しいのではない」。「必要なことは隔絶を無くすること」。映画のあらゆる場面で訴えられるメッセージに動揺しました。隔絶のひとつが、個々の中にも存在しているのではないでしょうか。これからの余生を貧乏神に取り憑かれている生きる凡夫にもまだまだできることがあると、なぜだか勇気が湧いてくる映画でもありました。人が生きる姿は本来とても美しい。鑑賞直後の今感じていることのひとつです。

「ポバティー・インク ~あなたの寄付の不都合な真実~」

FKシネマさん 16/09/24 13:05

試写会雑誌やテレビ、新聞や広告で知る災害や貧困への「支援」は、NGO、NPOなどをとおして、適切に行われていると無意識に信じていた。
物心ついた頃から見聞きする「アフリカの飢える子どもたち」は、その数の多さからにしても、いつになったら解決するのだろうとどこかで思っていた。


私たちは目の前の現象に、即座に反応してはいけない、心動かされることがあったとしても、一旦その感情を置いて、トヨタ式ではないけれど「なぜそうなっているのか」を幾度も問い、コトの全体観を掴むべきなのだと強く感じた。

そしてもうひとつ、「支援」や「サポート」というのは、その対象に寄り添うものであり、支援する側の独りよがりな提供であってはならない。余計過ぎるお節介は、時に相手から生きる力さえも奪うことがあるということ。


寄付の話だけど、きっと寄付の話だけでなく社会のどこかにこの不都合はたくさん横たわっている。私たちは、それらをどう知り、どう行動すれば、不都合な真実を変えていけるのか・・・。この確信的で世界的な構造は根深い。

「ポバティー・インク ~あなたの寄付の不都合な真実~」

シネマベリ二子玉川さん 16/07/20 20:06

役立ち 学び 人生変わる

今まで私は、ダムは人々の生活のために当たり前に存在するものと思っていた節があったが、それは思い込みにすぎないとわかった。

人が作り上げるものに当たり前などなくて、私たちは自然の力を借りて生きているという前提があると考えさせられた。

また、ダムを一つ作ることに対して賛成する人・反対する人がいるように、ダムを撤去するのにも賛成者と反対者がいる。
そして、どちらにも莫大なお金と人が動いている。

「自然の中に生かされている」という考え方を忘れてはいけないと気づかせてくれた映画だった。

「ダムネーション」

佐藤世里彩さん 16/06/14 13:52

感動 泣ける

こういう映画もっと映画館でかけたり、テレビでやればいいのに。

お年寄りばかりだったのが気になった・・・。

実は何も知らずにアラブの春の話っぽい&ポスターイメージで見に行ったので、ドキュメンタリーというのも知らなくて。
(それ故、貯まったポイントカードで見てしまった!ベネフィット(収益の一部が寄付される)だと知ってればお金払ったのに・・・!)

近く、ISによるパリの大規模テロが起こり、報復としてシリアへの爆撃が激化(1日500〜600の爆撃)してしまった状況だったので、見なければならない、という変な義務感にかられました。

だってニュースの話題としてあっても、こんな話知らないし!
道渡ったら戦車に撃ち殺されるとか、移動手段が廃墟と化した民家を次々に歩いていく、とかショッキングな現実がそこにあって・・・。

つくづくネット社会だからこそ、であろうと思う。
PC並べてみんなカチャカチャやってる姿は異国とは思えない。

でも話してる内容はもらったお金を武器調達に使う、という明朗会計で。

主役を担うバセットは元サッカー選手の24歳。
最初は歌を歌ったり踊ったり、街中がみんなで団結して反体制を主張していたのに、わずか2年で彼の手には銃が握られる。

映画自体は2011年〜2013年の映像なのだそうですが、どんどん仲間が減っていくんだよ・・・。

バセットに限らず、若者が皆しきりに殉死したいと言ってたのがとても印象深い。
怪我を負うとこで神の名前を叫びまくってたのもすごいと思った。
それだけ宗教というのが大きいものなのか。
日本人には飲み込みづらい話ですね。

バセットがどうなったのか、周りの仲間たちや映っていない若者たちがとても気になります。

考えたくないけど、考えてしまう可能性。

こんなに本物の死体をダイレクトに見たのは初めてかも・・・子供とか、その映像だけで涙がでてきました。
虐待されて亡くなった死体の撮影方法とかがびっくりするぐらいザル。

「それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~」

pomera2009no01bさん 16/06/12 13:26

学び

被災地で落ち込んでいる人々に
少しでも前を向く力を
与えてあげたいという
一人の想いから始まった企画、 
ライトアップニッポン。

想いがたくさんの人を巻き込んで
東北で花火が打ち上げられた瞬間、
運営者の4ヶ月間の軌跡が
形になりました。


私も、震災当時は福島にいた一人であり、
東北で花火が打ち上げられたことは
耳にしていましたが、この企画が
たった一人の「東北を元気する力になりたい」という想いから始まったものだとは
知りませんでした。

映画の中で、
「いろんな人の力に支えられて
助けられて生かされている…
(それは)震災以降は時々味わう不思議な感情。」
と話しながら涙ぐんでいた、
被災地の女性の言葉がすごく印象に
残りました。

誰かが誰かのために生きているから、
私達は「生かされている」という
感情を持つのかもしれません。

この映画は私に、そういった普段はほとんど考えることがない大切なことを、震災から5年たった今、気づかせてくれました。


生きている上で当たり前のことなんて一つもないということ、
誰かの誰かに対する想いが結局は人を動かすのだということ、
皆で前を向いていくことの素晴らしさ、、、

ライトアップニッポンは
私にたくさんのことを教えてくれました。

「LIGHT UP NIPPON -日本を照らした奇跡の花火-」

佐藤世里彩さん 16/05/27 12:47

感動

ありのままで生きる。
自分らしく生きる。

そんな、当たり前のように思えることを
辛いと感じている人がいる。


その一人が、同性愛者だ。



この映画の中では、
カリフォルニア州の同性愛カップルの2組が
同性結婚の権利を求めて訴訟を起こす。


彼らの願いはただひとつ、
愛する人と一緒にいたいということ。


しかし、愛する人が同性だというだけで
彼らが批判的・拒絶的な目を
向けられてしまう社会が存在しているのが現実。


法学者達は、2015年10月、
「憲法上の理由による反対」
として同性結婚を否定した。

ある人は、
結婚は「子供を産み育てるためのもの」と定義づけた。



しかし、本当にそうだろうか。

好きな人と一緒にいることは、
批判されるべきことなのだろうか。


そんなことを考えさせられた。



同じ想いを描きながら
社会の理不尽さと戦う二人の愛の力は、
「すごい」
の一言に尽きると思う。


最後に愛は勝つ

その言葉がピッタリ当てはまるような、
素敵な映画だった。




2015年6月26日、
同性婚はアメリカ全土で認められたが、
日本ではまだ一部の地域でしか認められていない。

日本列島でも、早く同性婚が認められ、
同性愛者が暮らしやすい社会に
なっていくことを願っている。

「ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~」

佐藤世里彩さん 16/05/17 17:10

感動 学び 人生変わる 泣ける

「新たな「いのち」と出会う瞬間、
それはなんと美しく素晴らしいことでしょう。
映画で映し出された出産シーンを見て感じたその尊さは、
自分の子どもだけでなく、自分自身の今ある「いのち」の尊さを再確認させてくれました。
鑑賞後、素直に「生まれてきてくれてありがとう」と娘を抱きしめたくなりました。
赤ちゃん、すごい。」
これは嘘ではなく、本当に思ったことです。
この映画はユナイテッドピープルが扱う作品の中でもずば抜けてレビューが多く評価も良いです。
人それぞれ感じ方や捉え方が違っていろんな意見があるのだなとつくづく思います。
なぜなら私の感想は、映画作品として言えば「これでお金をとると言うのか?」と思わざるをえない内容だったからです。
映画の冒頭に「私の記録」というようなテロップが入り、おや?と思ったままついにその印象は拭えませんでした。
自己満足とナルシシズムが席巻しナレーションや場面場面が間延びしており、作品が冗長していると感じました。
震災、高齢での妊娠、それゆえの不安と放射能からくる不安、帝王切開、元気に一歳を迎えた赤ちゃん、
とキーワードが継接ぎされたようなわかりやすい作りは、テレビドラマを楽しめる人には共感を呼ぶのでしょうか。
深刻そうなナレーションと不穏な音楽が流れる中しんどそうな顔をして横たわる重いつわりのシーンも、出産の直前まで田んぼ仕事をしたり、毎日100回のスクワットと数時間の散歩を続け、薬に頼らず鉄分をとるために野草の蘩蔞を一生懸命摘む妻の姿を見ていた私には自己愛にしか見えませんでした。
もし、出産に向けての体作りを含めた日々の暮らしのあり方は、作品には使っていないだけであるとしたら、余計にテレビドラマ的作法で嫌らしいです。
作品の最後の方に収められている赤ちゃんの誕生シーンはそれまでの辛気臭さを一蹴する普遍的な力強さを持っており、それがゆえの「赤ちゃん、すごい」でもあります。
改めて震災の映像をみれたことで、つい先日の出来事だったはずのものが「昔のこと」になってしまっているのに気付きました。東京で大きな揺れを体験し、震災後の一ヶ月後には福島や宮城、岩手、避難所に行きこの目で被災地を見てきたにもかかわらずです。それに気付けたことは良かったです。
しかし、この映画の内容なら1時間半の作品にする必要はなく、15分にまとめられるのではないか、と思いました。
出産、子供を授かる、いのち、をテーマにした作品なら、河瀬直美監督の「玄牝」の方がはるかに素晴らしいと思います。
しかし、感想は人それぞれで、
この映画を気に入っている方も大勢おられます。
私としては、限られた人生の時間の貴重な1時間半と鑑賞料、そして会場に行くまでの移動時間等々を使って来ていただくのがなんだか申し訳ない、というのが本音です。

「抱く{HUG}」

渡部建具店さん 16/05/03 21:51

初めて聞いた『ローカリゼーション』という言葉。急速なグローバリゼーションの中で物質的に豊かになったはずなのに、なぜかどこか心が満たされない。そんな長ーいモヤモヤ感に解決の糸口を示してくれる作品でした。どれもメモを取って残したくなるような貴重なお話ばかりでした。まずは、今自分の住んでいる町から見直す事を始めていきたいと思いました。

「幸せの経済学」

きりんさん 16/04/16 13:00

感動 役立ち 学び 人生変わる

ずっと都会で生きてきた自分とっては全く想像のつかない生き方だったけど、この映画を観て生き方に対する考えの幅がとても広がりました。人生の楽しみ方を見つめ直したいと思いました。
また、イカリア島の人々みんなが共通して持っている「必要最低限のもので満足する」という考えはこれからの社会問題を解決する上で必要不可欠な考えだと思いました。
映画トゥルーコストと繋がる気がしました。

「ハッピー・リトル・アイランド ―長寿で豊かなギリシャの島で―」

中村陸八さん 16/03/30 17:02

元気 役立ち 学び 人生変わる 笑える

何気なく買っていた服の裏側を観て悲しくなりました。
「私達の血でできた服なんて誰にも着て欲しくない」とバングラデシュの工場で働く女性が言っていたのが特に衝撃的でした。
安さの代償はあまりに大きく、深刻なのだと。

「ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~」

中村陸八さん 16/03/30 15:40

役立ち 学び 人生変わる

ランキング

伝説的なピアニストでアカデミー賞受賞作『シャイン』のモデルとなったデイヴィッド・ヘルフゴットは、...
この数十年、服の価格が低下する一方で、人や環境が支払う代償は劇的に上昇してきた。本作は、服を巡る...
1953年、アメリカのアイゼンハワー大統領(当時)は、軍産複合体を批判する有名な演説「鉄の十字架」別...
『0円キッチン』はジャーナリストで“食料救出人”のダーヴィドが食料廃棄をなくすため、廃油で走るキッチ...
命の輝き、母の愛、この世界に生きるということ。

水を飲み、大きく息を吸うたびに赤ちゃんへの影響...
1940年代から、完全食品として推奨されてきた牛乳。酪農業を営む家で少年時代を送っていたキャンベル博...
“普通”の人々に出会うために、韓国出身女性監督チョ・ソンヒョンが、韓国人として本来行くことの出来な...
営利目的の途上国開発業者や巨大なNGOなどにより、数十億ドルにも及ぶ「貧困産業」が生まれ、そのなかで...
[作品背景]
2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件が発生。その年の10月にはアメリカを中心とした...
エジプトの市民革命、スペインの大衆反乱、そしてニューヨークのオキュパイ・ウォール・ストリート運動...

※ レビュー数で集計