ピアニストのデイヴィット・ヘルフゴットと夫人の、演奏旅行の様子をメインに綴られたドキュメンタリー。『シャイン』で描かれていた、父親との確執や病気の発症などこれまでの半生についてはあまり語られず、主に現在の夫妻と周囲の人々のやり取りが優しい視点で綴られています。
デイヴィッドの日常は、『生きる喜びに満ち溢れている』という表現がまさにぴったり。
いつも誰彼となく、「僕はデイヴィット。君の名前は?」と見知らぬ人にどんどん近づいていって握手を求め、上機嫌の彼。
最初は「夫人はきっと隠れたところで大変なのだろう」なんて勝手に想像していましたが、映画の中で彼と時間を共にするうち、だんだんとデイヴィッドの「今この時を共にいる人たちと満喫したい」という強い気持ちが感染してきます。そして夫妻がどのようにお互いを必要としているのか、その深い絆の一端も理解できるような気がしてくるのです。
コンサートでのオーケストラとデイヴィッドのコミュニケーション。時に即興に走りそうな彼をじっと見つめながら全体の呼吸を合わせる指揮者。クラシック音楽をこれ程の緊張感でのめり込んで聞くのは初めてでした。
こんなふうに恐れなく出会いを受け入れ、自分をオープンして、人生を思いきり楽しみたい、という生への肯定感でいっぱいにさせられる映画です。
「デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり」
1000Springsさん 18/03/03 00:29