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ワンダーランド北朝鮮

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監督:チアラ・アヴェザニ、マッテオ・デルボ
監督:カール-A・フェヒナー
監督:アレクサンドリア・ボンバッハ

ワンダーランド北朝鮮

ジャンル 環境 平和 政治経済 人権 伝統文化 問題解決
時間 109分 製作年2016年  監督 チョ・ソンヒョン

北朝鮮の”普通”の暮らしとその人々。これはプロパガンダか?それとも現実か?

人々の幸せそうな表情に、自然エネルギーを活用した循環型な暮らし。
北朝鮮の予想外のリアルを発見するドキュメンタリー。

Screening Information

2024/12/07
[ 福島県 ] 第20回かわうちCINEMO「ワンダーランド北朝鮮」

上映会 開催者募集

(写真右)チョ・ソンヒョン監督  ©Kundschafter Filmproduktion GmbH

About the film

世界から隔離された国、北朝鮮に良いイメージを持っている人は少数派だろう。北朝鮮のイメージは大概、独裁国家で、核開発を行う危ない国といったところだろう。しかし、それが本当に北朝鮮の姿なのだろうか?韓国出身のチョ・ソンヒョン監督は、この問いの答えを探しに北朝鮮で映画制作を行うため韓国籍を放棄し、ドイツのパスポートで北朝鮮に入国。そして、エンジニア、兵士、農家、画家、工場労働者など“普通の人々”への取材を敢行した。

北朝鮮で制作する全ての映画は検閲を逃れられない。しかし、自由に取材活動が出来ない制約下でも“同胞”として受け入れられたチョ監督は、最高指導者への特別な感情を抱く普段着の表情の人々と交流し、意外と普通だが、予想外の北朝鮮の素顔を発見していく。

公務員画家の男性は、美しい女性を描くことを楽しみ、表情は明るい。デザイナーという言葉を知らない縫製工場で働く少女の夢は、“今までにない独創的な服を作る”こと。こんな“普通”の人々が登場する。また、経済制裁下にある北朝鮮の人々の暮らしぶりは慎ましいが、どこか懐かしさを感じさせる。経済制裁を受け、自活せざるを得ない必要性から、自然エネルギーを活用する人々の暮らしが循環型であることは驚くべき事実である。あなたの知らないもう一つの北朝鮮の姿が明らかになる。

More info

“普通”の人々に出会うために、韓国出身女性監督チョ・ソンヒョンが、韓国人として本来行くことの出来ない北朝鮮に韓国人国籍を放棄し、ドイツ国籍を得てドイツパスポートで入国し、韓国出身者として、初の北朝鮮政府公認ドキュメンタリー映画の制作を行った。韓国では、韓国政府の許可なく北朝鮮に行くと、裏切り行為としてみなされ、北朝鮮渡航後に韓国に戻ると投獄される恐れがある。そんなリスクを避けるために、ドイツのパスポートを使い、北朝鮮に入国したチョ監督は、“同胞”として受け入れられ、自由に取材行動が出来ない制限下で、人々の日常を捉えようとカメラを回していく。そして彼らが人生で何を望み、どんな夢を描いているのか聞いていく。

カメラが映し出す驚くべき北朝鮮の姿の一面は、北朝鮮が閉鎖的で、諸外国から経済制裁を受けているという事情によって皮肉にも持続可能な循環型経済への移行が進んでいることだ。エネルギーの面では、チョ監督が訪れた平壌の真新しいプールは地熱の活用をしているし、田舎の農家では自宅のテレビや照明の電力を太陽光発電により供給している。そこで見えてくるのは、北朝鮮が長年のエネルギー不足を解消すべく自然エネルギーに力を注いでいる事実だ。2013年9月2日朝鮮中央通信は北朝鮮が再生可能エネルギー法を制定したと報道(※1)。AFP通信は「2014年末時点で、北朝鮮国民の約2%が太陽光パネルを入手した」と報じている(※2)。韓国の北朝鮮専門家、鄭昌鉉(チョン・チャンヒョン)氏は、「北朝鮮「2044年までに再生エネルギーで電力500万KWを生産」計画を立案」と、北朝鮮の最新の再生可能エネルギー計画を確認したとしている(※3)。このように、北朝鮮は太陽光、太陽熱、風力、地熱発電など自然エネルギーを推進しているのである。

暮らしの面でも物もお金も限られている必要性から循環型な暮らしが出現している。チョ監督が訪れた農家の家庭では、野菜クズを家畜に食べさせている。家畜の糞は肥料になるし、糞から発生するメタンガスは料理用のガスとしても活用されている。さらに、収穫の終わった後に出る藁は、煮炊きと暖を取るために使われている。経済制裁下の北朝鮮の田舎では、自然とこのような自給自足的な循環型の暮らしが実践されているのだ。

この映画が映し出すそんな普通の北朝鮮の人々の暮らしは、多くの人々が想像するステレオタイプなものとはまるで違うものだろう。

(※1)North Korea adopts renewable energy law
http://www.nkeconwatch.com/2013/09/17/north-korea-adopts-renewable-energy-law/
(※2)北朝鮮で輝く中国製の太陽エネルギー利用機器 国境貿易で取引活発
http://www.afpbb.com/articles/-/3140850
(※3)北朝鮮「2044年までに再生エネルギーで電力500万KWを生産」計画を立案
http://dprkanalysis.info/analyzing02/news/news_detail_72.html

Data

原題 Meine Brüder und Schwestern im Norden 製作年 2016年
製作国 ドイツ・北朝鮮 制作
配給 ユナイテッドピープル 時間 109分

Cast & Staff

監督 チョ・ソンヒョン 製作総指揮
プロデューサー 原作
脚本 音楽
撮影 編集
キャスト

Review(13)

18/05/15 01:08

あらた さんのレビュー
学び
これはジャーナリスティックな報道映画ではない。
現実を写すドキュメンタリー映画ではない。
しかし、ファンタジー映画でも、ましてプロパガンダ映画でも、ない。

試写会を拝見させていただいた。
試写後に監督は、本作の作成前に北朝鮮側の映画会社と事前に幾度も打ち合わせを行い、政治的なものにはしないと約束し、こういう人物を撮りたいと意向を伝え、双方問題ない形で撮影を行った旨述べていた。
本作は、いわば「映画監督」として撮りたいものと、北朝鮮側が見せたい、あるいは見せても構わないものの、最大公約数的なところで生まれたもののように思われる。
では、そこに見るべきものは何もないか、答えは否、である。

「北朝鮮の庶民の生活」との触れ込みを聞けば、飢えや弾圧に苦しむ庶民や独裁体制の恐ろしさを告発するような映像を「期待」してしまう。
他方で、2千万人を超す人々が一国の内で暮らすのであれば、そればかりなはずもない。
この映画に映される人々は、確かに北朝鮮側が映画化されて問題ないと考える比較的豊かな、あるいは「従順な」人々かもしれない。
が、仮にそうだとしても現にそうして生活している人々がいることに変わりはなく、また、そうした人々の生活すらも謎のベールに包まれている。
断片的ながらもそのベールを剥いだ本作は大変興味深かった。

有り体な感想を言えば、日本のテレビによくある、芸能人が田舎や外国を訪ねて現地の人と交流するような旅番組を観ているかのようだった。
政治的な事情を取り払い(あるいは行間に埋めて)、ライトなテイストで見知らぬ生活を紹介する、そんな印象である。

個人的に惜しむらくは、映画に登場する人々が北朝鮮の中で相対的にどのような位置にあるかわからず、例えば平均年収に対してどの程度の年収かなど統計的なデータが有れば、鳥瞰的な視点が加えられたように思う。
それをすると報道的すぎて監督の意図する「映画」ではなくなるかもしれないが。

18/05/30 21:36

ひでまー さんのレビュー
学び
庶民の姿といっても、所詮は政府が斡旋してくれた人たちに会っただけでは、と思うだろうが、その点を割り引いても十分興味深い内容。そこに映し出される北朝鮮の庶民の姿は、裕福なわけでも、主体思想で頭がいっぱいなわけでもない。冒頭の軍隊関係者や田舎の人々はいかにもみすぼらしい。しかしだからこそ、そうしたありのままの姿を外国に発信してもらってよいと判断した北朝鮮政府関係者の意図を読み解くべきだ。
撮影を行った時点では南北会談やら米朝会談やらはまだまだ話にも出ていない。むしろ制裁が強化されていく状況の中であった。そんな中、強がってもっといいところばかり見せるのではなくありのままの庶民の姿を見せているのは、政府としては将来外国との様々な交流が増えていくことを想定していたのでは、とも思える。そしてまた、こうした作品がどのように受け取られるのかについても注視しているのかもしれない。

20/05/08 14:18

ユナイテッドピープル さんのレビュー
学び

「北朝鮮」「制裁」。漢字ではたったの5文字。しかし映画で誰が影響を受けるのか具体的に見ることが出来た。こういう人たちが影響を受けるんだと。僕はこの映画にリアリティを見たと思う。
- 有馬嘉男(キャスター)

***

監督はドイツ国籍を取得、北朝鮮に入国したが、撮影に当たって常時、監視の目が光っていたという。そんな状況を頭に入れてこの映像を見ていくと一見、平和的な、平穏な日常に見える映像が妙にスリリングに感じられてくる。観る者の映像を読み解く能力が試されている。
─ 原一男(映画監督)

***

初海外旅行で北朝鮮に行った時のことを思い出した。システムに驚愕し、素朴な人々の姿に懐かしさを抱く。偏見をとっぱらって、まっさらな目で観てほしい。
- 雨宮処凛(作家・活動家)

23/12/21 21:34

ひろんた村母屋 さんのレビュー
元気 学び 笑える
不思議だ。。題名の通り、ワンダーランドでした。北朝鮮が「インタビューしてもいい」人や「見せてもいい選りすぐりの」場所なのだろうな、と思いながら見るのですが、作為的なものとリアルが入り混じってなんとも不思議な世界です。印象に残ったのは、私が生活している家や日本の町と比較すると、すっきりとして、ごちゃごちゃとモノにあふれていない。調理シーンで台所も映るのですが、なんというモノの少なさ!本当にここで暮らしているの??と思ったり。監督のインタビューが、よいスパイスになっているように思いました。

24/04/28 19:19

信木総一郎 さんのレビュー
役立ち 学び 泣ける
『統一朝鮮』北朝鮮を取材した韓国人監督の映画を見た。まだ、統一の夢のあった時代のインタビュー。日本帝国の刑務所で夫を殺された婦人が追悼の花を捧げて「ソウルの刑務所で絞首刑となって、埋葬されている。統一されたら彼の亡骸を、この故郷につれもどしてあげたい」とコメントしていた。1945年3月のこと。70年以上も待ち侘びている人たちがいる。南北朝鮮が統一したなら、世界は平和に一歩近づくだろう。しかし、統一朝鮮は日本を凌駕する工業国になる可能性もある。だからだろう、統一を阻むひとたちが多いのは。他人の不幸の上に成り立つ、われわれの繁栄。恥ずかしいことだ。『ワンダーランド北朝鮮』

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上映会主催者の声

上映会を主催された方の声を紹介します
「知らぬが仏」では済まされない
当然のことながら、当局の検閲の中で制作されたこの作品。
試写会ではチェ監督も撮影対象は「当局が用意したリストから私が選んだ」とのこと。
当局がこれなら見せてもよいと思える内容であることが大前提ということです。

そのような中でチェ監督は「北朝鮮のリアル」を掘り出そうとします。
象徴的なのは「あなたの夢はなんですか」との問いかけ。
この言葉を聞いたときに、北朝鮮の方々の顔に表れる心の機微。

若い女性の縫製工は「私の考えた服を大勢の人に着てもらいたい」と、
間髪を入れずに明るく答えます。
ある農家の奥さんは、逡巡したのちに「舞台に立つのが夢でした」。

用意された美しい北朝鮮の社会と人々の生活。
でもそこに映っているのは、普通に食べて、普通に話して、普通に笑う人々。
人間というレベルで見れば、私たちと何も変わるところはありません。

当局が見せたいのは社会システムであって個人ではない。
でも私たちは作品のすべてのシーンで個人の顔に触れることができます。

「知らぬが仏」という言葉がありますが、
登場する人たちは皆、迷いがありません。
他の選択肢を知らないからなのでしょうか。

しかし、人間の尊厳という視点で見ると、
本当にそれでよいのか、疑問を感じます。
繰り返しになりますが、まったく同じ人間なのですから。

権力が情報を操作することの恐ろしさ。
ありのままを知らされずに生きる人たちの姿は、
私たち日本でも以前に経験してきた姿と同じかもしれません。

世界平和は、まずは知ることから始まると思う
中々知ることの出来ない、北朝鮮市民の普通の暮らし。

この映画の意見シェア会では、世界平和と持続可能な暮らしに関して、様々な意見を交換することができました。

世界平和は、まずは知り合うことからだなと思いました。ピーター・フランクルさんが、「世界平和のためには、人をお宅に招いてください。知り合うことから始まります。」と言っていたことを思い出しました。

強制的な経済制裁によりグローバリゼーションからはじき出された北朝鮮には、便利さを追い求めた日本が失ってしまった「人々の繋がり」、「ローカル資源を活かした持続可能なライフスタイル」に関するヒントがあったなとも感じました。

撮影許可の下りたところで、担当者が将軍様の愛をとうとうと語りながら、”ガイド”による24時間監視の中でされた撮影ですが、行間からにじみ出てくるものが多々あり、全てが新鮮でした。

まずは、韓国出身の監督が、軍人さんの中でアイドルのように人気で「一緒に写真を撮ってくれ!」と言われてワイワイ楽しそうに写真を撮っていて「私たちはそちらに行けないから、また来て。」と言っていたのが印象的でした。

平和のためには、人と人が知り合うことが一番大切だと思うのですが、知り合うことすら出来ないということ自体が一番の障壁なのだなと思いました。

世の中の分断が進んでいる昨今、まずはお互いを知り合い、受けとめ合うことが必要なのだなと思いました。

最後に、当日会場でメモに書いてもらった感想を、写真に添付します。



Rolling20'sシネマ ワンダーランド北朝鮮
不思議な映画だった。園児への教育の場面や絵描きさんが勝手に顔を別人にすり替えたり違和感のあるところもあった。南北が交流できることを夢見ている人とかプロパガンダか?という思いと真実という思いの間で揺れた。一昔前の機械が登場して、今のマイコン化した機械と違って「修理して使える」というのがいいなと思った。