プラスチックボトルの大量輸出やマイクロプラスチックによる汚染など、ごみ問題が山積みのいま。
ごみアートというタイトルを見て、まずは見てみよう! と「ツォモリリシネマ」で緊急上映会。
けれど、この映画は、環境問題を扱うドキュメンタリー、という予想をはるかに上回る痛快なノンフィクションなのでした。後で知りましたが、2010年ベルリン国際映画祭やアムネスティ・インターナショナル映画賞など30以上の賞を受賞している映画で、賞が全てではないけれど、やっぱり良い映画なのです。観る人一人一人に、ものすごく多角的に問いかけてきます。
現に、一緒に観た家族たちと夕飯時、翌朝の朝ごはん時、ずっと話してしまったくらい。
どんな映画だったのか・・・やっぱり本当は観て欲しいけれど。
一つだけ、問いかけることにします。
アート界という権威の中で、サクセスを手にしたら、
あなたは何をするだろうか。
例えば、このブラジル出身のアーティスト、ヴィック・ムニーズは、リオデジャネイロ近郊のごみ処理場で、カタドールと呼ばれるリサイクルゴミを拾う人たちと、巨大な作品作りに挑むことにします。
ごみ山をモチーフにしようと思っていたけれど、とヴィックは言います。
そこで働く人たちがいちばん美しいことに気づいたから、と。
滞在制作期間はなんと2年半に及びました。
そこで働く人たちを知ることから彼の制作はスタートしました。
でも、彼の意図するところは、一緒に制作するだけではありませんでした。
これまでも様々な素材で描いてきた彼が、ゴミをアートにした話題の大作を競売にかけます。
世界のごく一部と言われている、富を得た人たちが競ってお金を放出するその場に、
カタドールの一人を連れて行き、そこで巨額で落札されるところを目の当たりにします。
ヴィック自身も、実は空港でゴミを処理して、社会の底辺でもがく一人でした。
もちろん、そのままそこに残った人がほとんどだけど。
友だちの中にはドラッグで命を落とした人もたくさんいるけれど。
ふとしたチャンス。それを得て何かを始めることもできる。
けれど、それが叶わない人もたくさんいる。でも、それでも人は生きる。
いま、自分ができることは何かを考えて行動することなんじゃないか。
モデルに選ばれたカタドールは、お金という一つのチャンスを手に入れるけれど、
それをどう生かすかは自分次第なのだ。
それでいい。
バンクシーのように、落札された途端にシュレッダーにかける作家がいれば、
バスキアのように、ドラックで命を落として、作品がものすごい値段で取引きされるようになって収集家を喜ばせたストリートアーティストもいる。
お金という魔力に取り込まれず、涼しい顔で、それを享受し、利用したヴィックは、やっぱりかなり痛快なアーティストなのではないかと、私は共感します。
映画にカタドールのまま亡くなっていく哲学者のような老人が登場します。
その生き様がかっこよくて。彼のことが最後まで心に残っています。
この映画もまた再映したくなりました。(ツォモリリ文庫ディレクターおおくにあきこ)
本当は、チャンスが与えられれば自分の能力を発揮できるかもしれないのに、そのチャンスさえなく、ゴミを拾うしか生活のすべがない人々の存在をまざまざと見せつけられ、胸が痛くなります。
そして、アートによって、自分の持つ潜在能力に気づいて、生き生きとしてくる彼ら。
素晴らしい作品でした。