《サンダンス映画祭2016 ワールドシネマ部門グランプリ&観客賞ダブル受賞》ほか受賞多数
沈黙のかわりに私は叫ぶ。
絶望の淵に立たされたとき、あきらめない少女の歌は奇跡を引き寄せる。
家族のために結婚を強いられる魂のラッパー、ソニータは歌い、自らの運命を変えていく――
「難民という厳しい境遇でも諦めずに夢を追い奮闘するソニータの勇気と微笑みに感動した。この作品を多数の方々に観ていただき、無数に存在するソニータの様な難民への理解を深め、支援にも立ち上がってほしい。」
─ 緒方貞子(第8代国連難民高等弁務官)
レビュー一覧:http://unitedpeople.jp/sonita/rv
©Behrouz Badrouj
About the film
ソニータの理想の両親はマイケル・ジャクソンとリアーナ。もしパスポートを持っていたら名前はソニータ・ジャクソンにしたいと言う。スクラップブックに書いた夢は有名なラッパーになること。しかし、現在の彼女のファンはイランの首都テヘランの子ども保護施設の子どもたちだけ。パスポートも滞在許可証もなく、アフガニスタンのタリバンから逃れてきた難民の彼女は、不法移民としてこの施設で心の傷を癒やすためのカウンセリングや将来のアドバイスを受けている。
一方で彼女の家族は全く別の将来を準備していた。アフガニスタンに住む親は、16歳になったソニータを、古くからの習慣どおりに見ず知らずの男性に嫁がせようとする。花嫁の値段は9,000ドル。夢を追いかけたいソニータに結婚する気はない。しかし、家族との関係も失いたくない。そんなジレンマを抱えながらも女性が歌うことが許されないイランで、ソニータはどうしたらラッパーになる夢を叶えることが出来るのだろうか?ロクサレ・ガエム・マガミ監督は、取材対象の人生に関与すべきかどうか悩みながらも、同じ女性としてこの問に答えるようにソニータの夢と人生に深く関わることとなる。ラップのビデオクリップを製作すると、運命を変える出来事が起きる。果たしてソニータは人生を変えるチャンスをものにする事ができるのか?
More info
[作品背景]
2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件が発生。その年の10月にはアメリカを中心とした多国籍軍がアフガニスタンに侵略しタリバン政権が崩壊した。タリバン政権崩壊後のアフガニスタンでは2002年6月に移行政権が発足し、2005年には議会選挙が行われるなど、新しい国家作りが進んでいた。しかし2003年以後、徐々にアフガニスタン南部を中心に勢力を回復していったタリバンによるテロや攻撃が増加していった。同時に危険が増すアフガニスタンを出国する難民も増加の一途をたどることとなる。10歳の頃、家族と共にイランへと逃れた少女ソニータも、そんな難民の一人だ。国際連合難民高等弁務官事務所によると2016年末の時点でイランに暮らすアフガニスタン難民は約95万人。不法滞在者を加えれば、その数は数百万人にも及ぶともいわれる。
ソニータはテヘラン郊外の貧困地域に帯在許可書なく不法滞在する難民の一人だ。滞在許可証も保証人もいない彼女らにとって、住む場所を確保することすら難しい。誕生時から公的な書類で誕生の記録が存在しないため、正確な誕生日もわからない。また、アフガニスタンから逃れたイランでも、ヒジャーブ(頭に被るベール)を身に付けないと逮捕されたり、女性だけで公の場で歌うことが禁じられているなど、子ども支援団体で教育を受けながら、ラッパーの夢を叶えようとするソニータの環境は厳しい。
ソニータの母は兄の結納金を得るため、16歳になったソニータを無理やり知らない男性と結婚させようとする。母本人もソニータよりもずっと若い頃に同じように結婚している。アフガニスタンでは、親に言われるがままに結婚することが古くからのしきたりとなっているのだ。確かな統計を取ることがアフガニスタンでは難しいが、18歳未満で約半数の女性が結婚すると言われ、アフガニスタン独立人権委員会によると60~80%の女性が親が決めた相手と結婚している。いわゆる強制婚である。ソニータが保護されている施設の子どもたちも次々と結納金と引き換えに結婚が決まっていく中、ソニータはアフガニスタンの少女たちが抱える悩み、悲しみや怒りをラップに込めて歌い始める。そして次第に才能を開花させ、運命を変えていく。
Data
原題 |
Sonita |
製作年 |
2015年 |
製作国 |
スイス、ドイツ、イラン |
制作 |
TAG/TRAUM 共同製作:INTERMEZZO FILM、 ロクサレ・ガエム・マガミ、NDR、RTS、SRG SSR、DR |
配給 |
ユナイテッドピープル |
時間 |
91分 |
Cast & Staff
監督 |
ロクサレ・ガエム・マガミ |
製作総指揮 |
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プロデューサー |
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原作 |
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脚本 |
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音楽 |
ソニータ・アリザデ、セパンダマズ・エラヒ・シラジ |
撮影 |
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編集 |
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キャスト |
ソニータ・アリザデ
ロクサレ・ガエム・マガミ
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上映会主催者の声
上映会を主催された方の声を紹介します
上映後に開催しているオンライン交流会。
今回もたくさんの思いが共有されました。
みなさんに共通していたのは、どんよりと重い感覚。
それはきっとソニータを取り巻く環境からのものでしょう。
伝統なのだから変わるはずがないという思い込み。
自分がそうだったから娘もそうだという思い込み。
そこですべての思考が止まってしまっていて、
まったくそれ以外の選択肢を考えることもできない。
これって本当に怖いことだなと全員で共有しました。
そんな中で、ソニータが前を向いていられたのは、
彼女を助けてくれている人の存在でした。
彼女の自由を縛るものも人。
彼女の自由を守るのも人。
人のつながりの持つ意味について
あらためて考えさせられました。
Zoomを利用した上映会は初の試みでしたが、参加者の皆さまからは、コロナウイルスによる自粛期間にもかかわらずこのような形で視聴できてよかった、家族で難民問題について考えるきっかけとなった、地方からでも参加でき助かった、など有り難いお言葉を頂戴しました。
映画の前後では、国連UNHCR協会の中村恵さん(事務局長特命・渉外担当)にご登壇いただき、ソニータをはじめとしたアフガニスタン難民の背景や、新型コロナウイルスが難民にどのような影響を及ぼしているかなどご説明いただき、難民の方が置かれている状況に対する理解がさらに深まりました。
また参加者の方からご質問をチャットで送っていただき、最後に一部に回答する形で質疑応答もできました。
技術面での苦労もありましたが、今回の反省を踏まえ、より質の高いZoom上映会を今後も開催できればと考えております。大変にありがとうございました。
かなり重いテーマの映画で、参加者のみなさんがどう思うだろうかと思っていたのですが、上映後、みなさん口々に感動した、ものすごいリアリティで圧倒された等の声を聴きました。
上映後のダイアローグ会では、「人生における選択の自由が多くあること」の尊さ、大切さについて語られたり、ジェンダーの観点、親と子の観点等、様々な観点での意見が出て、参加者のみなさん満足いただいたようでした。
女性問題として、また、人権問題として考えさせられた映画だった。女性の立場からは憤りを覚えるとともに悲しくなるシーンがたくさんあった。
諦めずに夢を追い奮闘するソニータの勇気と微笑みに感動した。
この作品を多数の方々に観ていただき、
無数に存在するソニータの様な難民への理解を深め、
支援にも立ち上がってほしい。
─ 緒方貞子
(第8代国連難民高等弁務官)
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誰が、なんと言おうと
自分の人生は、自分で、決める。
彼女の生き方をリスペクトしています。
─ MIYAVI (アーティスト / ギタリスト)
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圧巻のドキュメンタリー
ヒップホップアーティストを志す
イラン在住のアフガニスタン難民の少女ソニータ
ソニータの魂のライミングに心揺さぶられる
この映画の意味を
受取手が意義に変えなくてはならない
─ 斎藤工(俳優、フィルムメーカー)
(ブログ・斎藤工務店より引用)
***
心に鍵をかけるのをやめた
ソニータ
彼女の中の怪獣が暴れだした
それ、を音楽という。
もう誰にも止められない
言葉の生まれる瞬間を
映画を通して立ち会えると
こっちも興奮してしまう
あなたも
詩人誕生の目撃者になりませんか
─ 一青窈(歌手)