私は無数の人々の声になる。
2018年ノーベル平和賞 国連親善大使 ナディア・ムラドの決意と行動
イラク北部でISISによる虐殺と性奴隷から逃れ、人々の希望となった23歳のナディアに密着した感涙のドキュメンタリー
「ナディアは彼らの声の代弁者
彼女が彼らの未来です
彼らの唯一の希望です」
アマル・クルーニー(人権弁護士)
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©RYOT Films
About the film
ノーベル平和賞2018の受賞者、ナディア・ムラドはISIS(イスラム国)による虐殺と性奴隷から逃れた23歳のヤジディ教徒だ。彼女は、普通の女の子のように生きたいと思う時もある。しかし残された同胞のため、国連などの国際的な表舞台で証言を続け、やがては同郷の人々の希望の存在となっていく。
More info
ノーベル平和賞2018の受賞者で23歳のナディア・ムラドは2014年8月までイラク北部の小さく静かな村、コチョ村で母と兄弟姉妹達と幸せに暮らしていた。しかし、ISIS(イスラム国)がやって来て、少数民族ヤジディ教徒の虐殺が始まる。殺されるだけではない。捕まった少女や女性は戦利品として売買や交換の対象となった。ナディア達も捕らえられ、母親と6人の兄弟は殺されてしまう。彼女は性奴隷として3ヶ月扱われた末、脱出に成功し、ドイツに逃れる。そしてナディアは2015年12月の国際連合安全保障理事会で、ISISの虐殺や性暴力についての証言を行い、ヤジディ教徒の希望の存在となる。
少し前までは、どこにでもいるような普通の女の子だったナディアの夢は、自分の村で美容室を開くことだった。普通の生活に戻る日を待ち望みながらも、故郷を奪い、家族も殺したISISの虐殺を止め、まだ捕らえられている同胞や、世界中の性暴力被害者のため、彼女は表舞台に立ち続けることを決意する。そして彼女は痛ましい体験を、苦しみながらも繰り返しジャーナリスト、政治家、そして外交官に訴え続けた。カメラは冷静に数々の困難に辛抱強く立ち向かっていくナディアに密着し、ギリシャの難民キャンプや国連本部でのスピーチまでを追っていく。そして、彼女の揺るぎない決意を浮き彫りにしていく。
Data
原題 | On Her Shoulders | 製作年 | 2018年 |
---|---|---|---|
製作国 | アメリカ | 制作 | |
配給 | ユナイテッドピープル | 時間 | 95分 |
Cast & Staff
監督 | アレクサンドリア・ボンバッハ | 製作総指揮 | ブリン・ムーザー、マット・イッポーリト、マリー・テレーズ・ギルジス、アダム・バーダック、アリソン・グレイマン |
---|---|---|---|
プロデューサー | ヘイリー・パパス、ブロック・ウィリアムス | 原作 | |
脚本 | 音楽 | パトリック・ジョンソン | |
撮影 | 編集 | アレクサンドリア・ボンバッハ | |
キャスト | ナディア・ムラド ムラド・イスマエル アマル・クルーニー |
Review(1)
20/05/07 14:41
上映会主催者の声
来場してくださった方は、トークまで残っていただき
活発な意見交換ができたと思っています。
トークでは、行動することの大切さを感じたという声や、
もっとこういうことが世界で起きていることを、もっと高校生をはじめとして知られてほしい、知って欲しいという声がありました。
彼女はかつて暮らしていた村に、家族たちと再び帰るために自らの体験を語り続け、世論を動かそうと奮闘する。それがどれほど辛い想いを反復させる行為だとしても彼女は闘いをやめることが出来ない。
映画の中で彼女は、離れ離れになった家族の安否が知れないと言っていた。それはつまり、世論を動かすのが 1 秒でも遅れれば家族や仲間たちを助け出すまでの時間が伸びてしまうことを意味する。闘いの相手は ISIL でもあるが、同時に自分のような、命と尊厳の危険に瀕していない、世界中の人々の意識だ。それが変わっていかないことには、受賞したノーベル平和賞ですら、彼女にとってはなんの価値も持たないものなってしまうと思う。
彼女の悲しげでいてあまりにも強い姿を見ていると、何も知ろうとしないこと、一切の行動すらも起こさないでいることはむしろ、彼女たちを加害することに加担しているのではないかと、そんな風に思えて落ち着かない。とはいえどうすればいいのか?彼女の一挙一動からまずは何かを感じてみることにした。買い物をしたり、料理を作ったりしている彼女が束の間に見せる穏やかな表情もあれば、またすぐに、自分では推し量る事もできない苦しみに今も尚侵されているかのような無表情になる。あまりにも些細な一歩だが、彼女のあらゆるメッセージを隅々まで受け取ろうと試みる事が彼女の誓いを成就させ、その肩に背負ってしまったものを和らげることに繋がると思う。
---ツォモリリシネマ担当 小栗千隼---
上映会の参加者数は4人と少なかったが、その分、上映会後の話が親密なものになった。「思っていたよりも重い内容だったけれど、難民の問題は自分たちも考えなければいけないこと。でも、自分には何ができるのか、まだわからない」「ISISが生まれた背景には、イラク戦争があり、外部からの干渉があり、彼女たちの身に起きていることは自分と全く関係がないわけではないと感じた」「宗教を理由に起きている問題ではあるけれど、その背後にあるものは経済優先の世界の仕組みのようにも思う」「映画が製作された後、2019年の今はどうなっているのか、調べたいと思った」などの感想が聞かれた。
終了後の交流会でも、他の参加者からも、同じような感想を聞くことができました。
心身ともにボロボロになっているナディアが、あのような活動をすることでしか、社会は変えられないのでしょうか。大きな権力を持つ、組織にいる人たちの非力さに悲しくなりました。
とにかくナディアが自由になる日が来ることを祈りたいです。
この映画は日本人にとって、「自分にはどうすることもできない絶望的な現状」を描いたものと思われがちではないかと思いますが、私はこの映画が描いている現状と変わらない「人権侵害」が日本にも蔓延している、と感じ、「できることは無数にある」と思いました。
まっさきに思い出したのは、親に虐待されて殺された子どもたちのこと。親からの暴力を訴えた公的機関からも放置され結果的に父親から殺された少女の事件などは、ナディアの民族がこうむっている問題と根本的には同じではないかと、私には思えます。
「遠くのこと」と思わず、ナディアの目をした人々が身近にもたくさんいることに氣づき、意識しながら、自分の生き方を見つめ直せば、きっと一人一人にできることがたくさんある。
この映画は私にとって、そんな想いを呼び起こしてくれる作品でした。
この作品とナディアの存在を心に置きながら、氣づきを自分の行動と在り方に落とし込んで、毎日を生きていこうと思います。
<参加者の声>
・「今動かないで、いつ動くのです?」という、ナディアの言葉が胸に刺さった。
・「人権はみんなで守るもの」という強い意志の言葉に心動かされた。誰の人権も奪われてはならない。
・難民やISについて、今までは自分とは関係ないと感じてきたが、この映画を観た今は、つながっていると思う。自分のこととして考えていきたい。
・すごく感動的でした。自分は何も知らないんだと反省しました。世界に目を向けなくては。
・すごい映画でした。今、世界には難民があふれています。自分に何ができるのか?本当に問われている問題だと思います。
・とても考えさせられるよい映画でした。今の日本でも同じようなことがあります。身近なことでも小さなことでも、虐げられた人々のために行動したいと思いました。
・大変素晴らしい映画でした。難民が数多くいることは知っていましたが、彼らの傷の深さは知らなかった。なぜこのようなことが起こるのか考えなければ。本質的な人間の尊厳を考え直さなければ。
・心に残った言葉;「世界には国境はなく、人道があるだけ」 …他、多数の回答をいただきました。
― 安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
***
人権侵害を知らせること自体が難しい、世界を動かすことはもっと難しい。その中で、ナディアさんのような被害者が声を上げることの勇気、困難、希望が凝縮された映画。
― 土井香苗(ヒューマン・ライツ・ ウォッチ(HRW)日本代表)
いくら言葉を尽くしても越えられない「無関心」の壁と闘うナディアさんの底知れぬ悲しみに言葉を失う。それでも前を向く彼女の強さに涙が止まらなかった。
― 長野智子(キャスター)
***
夢、家族、故郷、自由―、一度に全てを失った一人の村娘ナディア。「どこに行って話しをしても、奴隷だった自分しか見えない」。悲しむ人々の代弁者となった彼女の言葉と、遠くを見据える眼差しに、私たちはどう向き合うのだろうか。
― 林典子(写真家)
その他レビュー
https://unitedpeople.jp/nadia/rv