もう二度と見ることができない…切なく美しい島の物語
これは、気候変動に揺れる3つの島を見つめたドキュメンタリー作品だ。
About the film
南太平洋のツバル、イタリアのベネチア、アラスカのシシマレフ島。
主人公は、気候も文化も異なる島で、それぞれ故郷を愛して生きる人々の“普通の暮らし”だ。絆を育む祭りや、代々受け継がれてきた伝統工芸、食文化、水辺のゆったりとした生活。そのどれもが、今、気候変動によって失われる危機にある。
ナレーションやBGMをあえて入れない構成を選んだのは、彼らのありのままの暮らしのずばらしさを見てもらうため。
波や風の音に耳を澄ませ、子供たちの輝く笑顔とともに、近い未来に消えてしまうかもしれない文化を味わう。気候変動がさらに深刻化になったとき、私たちはそれを失うかもしれない――
私たちにできる第一歩はまずは知ることだ。
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舞台は、南太平洋のツバル、イタリアのベニス、アラスカのシシマレフ島。気候も文化も異なる島で生きる人々の普通の"暮らし"に焦点を当て3年がかりで撮影。絆を育む祭りや、長年受け継がれる伝統工芸、水辺の暮らし。そのすべてが気候変動で失われゆくものです。
海南は「気候変動で、私たちが一体何を失うのか?を"感じる"作品を作りたい」と、ナレーションやBGMを排して、波や風の音、島の人々の美しい歌声や子供の笑顔と旅する作品に仕上げました。撮影には詩的な映像で知られる南幸男を迎え、現場で1カットずつ話し合いながら作った渾身作。
エグゼクティブプロデューサーには、海南の20年来の友人で恩師でもある是枝裕和が、企画に参加しています。日米韓でロードショー公開された。 デジタルな世界で生きる私たちの本質的な感性がよみがえる1時間46分です。
●海南友子 (かなともこ)監督・プロデューサー・編集
1971年 東京都生まれ。日本女子大学在籍中に、是枝裕和のテレビドキュメンタリーに出演したことがきっかけで映像の世界へ。卒業後、NHKに入局。報道ディレクターとしてNHKスペシャルなどで環境問題の番組を制作。2000年に独立。初監督作品は01年『マルディエム彼女の人生に起きたこと』。続く『にがい涙の大地から』(04)で黒田清日本ジャーナリスト会議新人賞を受賞、台湾国際ドキュメンタリー映画祭などに出品。07年劇映画のシナリオ『川べりのふたり(仮)』がサンダンス国際映画祭でサンダンスNHK国際映像作家賞を受賞。環境問題はライフワークで、学生時代には植林などの活動や地球サミット(92年)のプロセスに参加。ごみゼロナビゲーションで知られるASEEDJAPANの立ち上げメンバーでもある。
海南友子公式サイト:http://kanatomoko.jp/
●是枝裕和 (これえだひろかず)エグゼクティブプロデューサー
1962年、東京都生まれ。テレビ・ドキュメンタリーの演出を経て、95年、初監督した映画『幻の光』がベネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞等を受賞。以後、『ワンダフルライフ』(98年)、『ディスタンス』(01年)、『誰も知らない』(04年)、『花よりもなほ』(06年)、『歩いても 歩いても』(08年)、『空気人形』(09年)を監督、海外でも絶大な評価を得ている。09年には初のドキュメンタリー映画『大丈夫であるように―Cocco 終わらない旅―』が公開された。
是枝裕和公式サイト:http://www.kore-eda.com/
●海南友子監督メッセージ
私には忘れられない光景があります。
テレビ番組の撮影で訪れた南極に程近いパタゴニアで、
氷河の取材をしていた時のことです。何万年もの時を重ねた氷河が、眼下に果てしなく美しく輝いていました。
しかし、突然の轟音とともに、あっという間に消えたのです。後には、氷河の崩れた音だけがいつまでもこだましていました。
自分の踏みしめていた大地が、跡形もなく消える。
その恐怖の生々しさに私は震え上がり、『いつか私の住む町にも、同じようなことが起こるかもしれない』と、強く感じました。
その恐怖は、氷原の美しさとはあまりに対照的で、強く心に刻まれました。
私は今回、この作品で“失われゆくもの”を描きたいと思いました。
足元の氷河が消えてしまったように、気候変動の影響を受ける島で は、長年築いてきた生活文化や伝統など、
さまざまなものが消えゆく運命をたどろうとしています。
それらをよりリアルに感じてもらうために、なるべくそのままに近い形で記録しました。
余計な演出やナレーションはありません。
風の音や人々の笑い声に耳を澄まし、ゆったりと作品と対峙してもらいたいのです。
そして、“情報”ではなく、“心”で受け止めてほしいのです。私たちの何が失われようとしているのか、を。
Data
原題 |
|
製作年 |
2009年 |
製作国 |
日本 |
制作 |
ホライズン・フィーチャーズ |
配給 |
ゴーシネマ |
時間 |
106分 |
Cast & Staff
監督 |
海南友子 |
製作総指揮 |
南 幸男 |
プロデューサー |
海南友子, アソシエイトプロデューサー・編集: 向山 正利 |
原作 |
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脚本 |
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音楽 |
整音: 森 英司 |
撮影 |
南 幸男 |
編集 |
海南友子 |
キャスト |
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上映会主催者の声
上映会を主催された方の声を紹介します
□世界各地で起こっている気候変動について考えさせられた時間でした。自分がいる世界、見えている世界はほんの一部でしかなく、世界はもっと広くもっと大きな問題があると実感しました。人と人が助け合い平和で幸せな世界であってほしいと思いました。
□2-3日前私が旅したアイルランドのアラン島でも同様なことが起こっている様子が映っていた。地球全体の問題。地球に住まわせてもらっている地球人としてできることはたくさんある。
□ツバルの自然や文化、暮らしが失われようとしていることに心が痛みます。原因はツバルの人達の暮らし方ではないことで起こっていることであり、どうしたらいいか、希望は?今起こっていることは過去の出来事の結果であり、今どう考えて暮らしていくかが未来を決めていくのだろう。ツバル、アラスカ、ベネチア、どんな場所にも子供たちは暮らしている。遊びがあり、人々の文化、歌があり、心の豊かさもあり、子供たちが笑顔で希望をもって暮らせるように、できることをしたいと思う。
□10月になっても夏日が続く日々。気温の上昇を体感している。しかし、世界を見ると気候変動や海面上昇によって、国そのもの、アイデンティティすら失いかけている人がいる。
私には何ができるのだろう。沈みかけている祖国の現実を見ながら、神が救ってくれると言う人達の笑顔を思うと自分にできる何かを見つけなければ、実行しなければという思いが尽きないです。
□人類の営みによる温暖化のために、低海抜の国が沈んでいくという考え方がある。
一方、地球という生きている星の営みでもあり、しょうもないのかなとも思います。
穏やかな映画で良かった、という感想がありました。
突然に“普通の暮らし”を失ってしまった能登に住む私たち。映画の中の遠い国の暮らしは違うようで、私たちのそれと似ているような気もする。人々のつながり、土地に対する想い、信じる気持ち。現実をどう受け止めるのか?余所から来た私にはよくわからないこともあるけれど、何かちょっと温かいものが心に生まれた。
「再建」や「復興」と言うけれど、私たちが取り戻したい、失いたくないと思っているのは本当はなんだろうか?
会場の元小学校のグラウンドには仮設住宅が建ちました。直前だけれど、知り合いのお母さん方をお誘いしたら連れだって参加してくれたことも嬉しかったです。
この作品は、平凡な日常をじっくり見てほしいという意図で制作されたものなので、人によっては長すぎると感じた人もいたようです。しかし、なにげない日常やとても美しい景色・景観を丁寧に紹介することで、温暖化に伴う厳しい現実をより際立たせていたように思います。
気候変動に脅かされる状況の描写は、時に危機をクローズアップしがちですが、本作品の制作者は、危機に迫られつつも平穏に生きる人々の日常を伝えようとしました。その意図は美しい風景や幸福そうな人々の営みが十分に伝えてくれています。そのことが、却って将来の危機的な状況を見る人に印象付けていたように思います。